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魚と釣り

2014年04月

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山形と新潟の県境の鼠ヶ関の沖合に「大瀬」と呼ばれている瀬がある。

この瀬は佐渡ヶ島、粟島、「大瀬」、飛島と並んでいて、
大瀬は島ではないが、70〜80mの水深から立ち上がり、
一番浅い所は30mの浅根だ。

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30mの浅いエリアは保護区で禁漁区になっている。
ここがタイの産卵場で5〜6月に産卵する大事な場所で、
山形県漁業者は大切にしている。
 
対馬暖流の影響で9度より下がる事はまずないが、
潮温が下がる、1月頃から越冬の為、
マダイが集まって来て、
産卵前行動(プレスポーニング)を、
集団見合いのような、個体の確認のような感じで集合する。

マダイは群れで産卵する集団産卵なので、
ここに集まり30mの浅場で1匹のオスが何匹かのメスを追いかけ、
急浮上したり、急降下したりして、
ラブアピールして水面近くで一斉に放精、放卵する。

小分けで、何回も産卵する多回産卵で10回以上もする個体もある。

1回の産卵で10万〜30万粒産卵する。
時間帯は薄暗い時間帯の朝晩、満月の夜間が多いとの報告があり、
分離浮性の卵で、潮目に浮いて2日程で孵化する。

産卵時の急浮上で水中に戻れずに浮いているタイを、
早朝に見かけることもある。
産卵のダメージかもしれない。

真鯛釣り-5

青森、陸奥湾にもマダイがいて、越冬しているが、
今年は冷たい潮が入り、3月の初めに潮温が4〜6度になり、
沢山のマダイが低温麻痺で浮いて話題になった。
 
この大瀬の沖合は200mの大陸棚斜面になり、
そこの100mより浅い水深をクロマグロが春から初夏に北上したり、
真冬に南下したりするコースになっている。
 
要は豊穣の海なのである。
その要因は日本海の100mより下層にある、
日本海固有水と呼ばれる底部冷水層だ。

この水塊は大陸の大河から流れ込んだ冷たい水塊が海水を冷やし、
比重が重くなり、沈み込んだ海水で溶存酸素量も多く、
塩分濃度も1000分の34とあり(太平洋は1000分の34〜36)、
豊かな海だが水温が低い、
それを黒潮の分流が日本海に入り込み、対馬暖流となり、
表層から100mを温帯系の水生動物の楽園に形成している
特殊な環境の海である。

真鯛釣り-6

 日本海の説明をしないと前に進めないのは
タイの餌となる、アミエビ、イサザエビ、オキアミと呼ばれている
甲殻類が非常に多く、それを捕食しているからだ。
 
冬が終わる頃、アミエビ類の産卵で大群で出現する。
浅場にも、深場にもだ。

タイは口を開けて、泳いでいれば捕食で来る状態だが、
アミエビが多くいる低層は水温が低いので、そこに行こうとしない。
 
その頃に、吹く強い西風で海水の低層循環が起こり、
東側の浅場に湧昇流が起こる。
対馬暖流と複雑な構成でアミエビが浮くと、
そのエリアにタイが集まってくる。
 
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それをジグで釣るのだ。
誰が、どのようにして、この釣りを構築したかは定かではないが、
4、5年前には大瀬で行われていた。
関西、関東はタイラバーやテンヤがブームになっていた頃である。
 
PEラインの細いのが安価になって普及して、
漁師も餌の確保がいらないので大流行である。
当たりカラーは緑金、赤金で日本海側の釣具屋では手に入らない状況だ。
 
当時は、ご当地の進歩的釣り方と思っていたが、
タイを釣っている内に理に適っている感じになり、各地で試している。

1年を通して通用するか疑問だが、
小さい甲殻類は1年を通して居るので通用するだろうと思っている。
 
小さいジグで棚まで沈め、
ジグに着装している鈎を食わせるライト・ジグ・マダイ釣りである。
タイは臆病なので大きなジグをジャカ、ジャカとジャャークすると
逃げてしまうのでゆっくりとリールを巻いてくるだけだが、
これが難しい、等速で水深の半分以上を探る。

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タックルはウルトラライトのロッドセットやテンヤのロッドでOKで、
PEライン0.8号、リーダーは3〜4号を使用する。
ジグは1m、1gの目安でボトムの水深に合わせる。
70mだと70〜80g、50mだと50〜60gだ。

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桜の咲く頃のマダイを粋な名前で桜ダイと呼ぶが、
桜マダイと呼ぶ方が
魚名の混乱を招かなくていいのだ。
 
標準和名でハタ科の小さい魚で「サクラダイ」がいる。
同じハタ科の魚でアカイサキと呼ぶ魚と似ていて、
さすがにハタ科の魚だけあって味はすこぶるいいようだ。
姿、形はマダイには似ていないが、タイと呼ぶ理由は赤いからだろう。
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その桜マダイの釣り方が近年、目まぐるしく変化している。
進歩しているのかもしれない。

餌釣りではオキアミのコマセを使う、コマセ釣りと小型の海老、
関東ではサルエビを使うテンヤ釣りがある。

テンヤ釣りは、難しい釣り方で覚えるのに一苦労する。
 
特に、ビシマのテンヤ釣りは難しい釣り方だ。
ワリビシと言う、豆粒サイズの錘をラインに小間隔に付けて、
ラインを重くして、潮の速さに負けないで棚を取れるようにしたラインだ。
このラインの先に鈎素が10m付いていて
テンヤと言う豆錘付きの鈎がつき、
その鈎に生きたサルエビを弱らないようにして上手につけると
型の良い真鯛が釣れるのだ。

餌の付け方が難しいし、棚を取るのも難しいので廃れてしまった。
ナイロンラインから細く、強いPE(高分子ポリエチレン)ラインになると、
軽い錘で棚が取れるようになり、
テンヤだけで棚を取る釣り方、一般に「ひとつテンヤ」と呼ぶ釣り方が多くなった。

テンヤは一つしか付けないのが当たり前なので「ひとつテンヤ」と呼ぶのは変だ。
「テンヤ釣り」で充分だろう。
 
特にPEラインの普及とともに、竿やリールが進歩、進化した。
海のルアー釣りも、ジグと言う小魚に姿、形が似た、
アピールする錘に鈎を付けた、ジギングと言う釣り方で
ヒラマサ、ブリ、カンパチ、マダイ、サワラ、スズキ等の高級魚が
誰でも釣れるようになった。
 
しかし、マダイだけは
まぐれで釣れてもコンスタントに釣るのは難しく
たまたま、釣れたと思う感じがあった。
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瀬戸内海のタイ漁師が常用していたカブラという、テンヤがある。
このカブラには色ゴム糸を10〜20本付けたらしてあり、
大抵は赤いゴム糸で「ゴムカブラ」と言う。
このテンヤが3〜4年前、爆発的にはやった。

その進歩的バージョンが「タイラバ」として今も残っているが、
そう簡単には釣れず、単調で面白く感じない。
和歌山の加太沖で、この仕掛けで
自己記録7kgの大ダイを釣ったこともあるが、まぐれ的な感じである。

大阪と和歌山の県境の加太で、白いビニールを細長く切り、
3本の鈎に付けて、その下に錘を付ける、胴付釣りのマダイ釣りがある。
 小魚の仔魚をイミテーションしたのがこの仕掛けだ。
コウナゴの仔魚が瀬戸内海から流れてくる1〜4月頃が、この釣りのシーズンだ。
 
このエリアで昔から使われていたタイカブラ釣りが、
和歌浦、雑賀?、雑賀衆の釣り集団によって、
マダイやカツオ、マグロを追い、
北上して伊豆や外房に来て、色々の魚の釣り方を教えた。

家を継がない、次男、三男はその土地に居ついて故郷の地名を名付けた。
そんなことで、紀伊半島と伊豆や外房には同名の地名が多くある。
 
外房、勝浦や大原にはタイ玉と言う大きいカブラがあり、
タイを釣るのだが、
紀州から伝承した釣り方だが、今それを使う漁師はいない。
 
東京湾のビシマテンヤのタイ釣りの合わせは漫才を見ている感じで
急激に手をあおり、合わせを入れるので、
何事が起きたかと思ってしまう。

仕掛けが鈎素の部分で浮き、L字になっている為、
急激にラインを直線にしないと鈎に掛からないからだ。

この技がなかなかできない。

他のタイ釣りは前当たりが続き、本当たりで合わせを入れる釣りだが、
前当たりで手が動いてしまうことも多くある。

ルアー釣りは即合わせが通常で、癖になっているのか、手が動き、失敗する。
釣りに焦りは禁物である。
 
日本海の山形県と新潟県の県境沖の大瀬で大型のマダイが釣れると、
仲の良い、酒田の船長から連絡があったのは4、5年前だ。

40〜60gの小型のジグを50〜70mのボトムに沈め、
ゆっくりとリールを巻いてリトリーブすると、
ボトムから10〜20m辺りで「ゴツン、ゴツン」と前当たりあり、
ギューと竿を持っていかれる、この本アタリで大きく合わせを入れる。
これがジグでの鯛釣りの特徴だ。
征海丸ジグタイ
この釣り方を関東でやりたいとずーっと思っていたが、
チャンスが無かったのと、そう簡単ではないだろうと思っていた。

エビ餌テンヤの船で試したところ、
びっくり、びっくりの釣果が出てしまった。
それに釣り味も濃く、面白い。
4、5回試したが釣れることは請け合いだ。

イサザエビやオキアミが出現する、この時期だけかもしれないが、
これからが型の良い大きなマダイのシーズンに入るので楽しみだ。
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NHK教育テレビで「趣味の講座」と言う番組があり、
海のルアー釣りの部門を受け持った。

オフショア(船の釣り)の「シイラのルアー釣り」と
ショア(岸)から攻める「ヒラスズキのルアー釣り」の2編で
主役は清水国明である。

彼は岐阜と福井の県境を流れる石徹白(いとしろ)川で
アマゴやイワナを小さい頃に釣ったようで
釣りのセンスやアウトドアのセンスは抜群である。

そのテキストの中に、釣った魚の料理のページがあり、
ヒラメを釣るはめになった。
釣魚料理のコメンテーターは村野武範である。

当たりが無くヒラメが釣れずにいると、
「ルアーは釣れない」とか言っていた、その時、
大きな当たりがあり、
絶対ヒラメだと思ったら大きなホウボウが胸鰭を広げて浮いてきた。

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ジグで釣れたのはマゴチとホウボウだけで
ヒラメは釣れずに終わってしまった。

その時から
ヒラメ釣りの外道がホウボウ
との思いが強く、
気を引く、魅力あるターゲットにならない魚になった。
 
ヒラメ釣りの終盤となる、3月頃になると
ホウボウが産卵の準備(プレスポーニング)に入り、
浅瀬、水深は30m前後に移動して餌を荒食いする。
普段は50mより深い層で群れにならずに生息している。  
                  
温帯水域の潮温が9〜13℃になる頃に水中で
「ボウーボウー」
と泣いて仲間を呼ぶのだ。

メスはオスより大きい声をだし、オスを呼び寄せる。
また、何らかのフェロモンも出している可能性もある。

水中の酸素を鰓(ルビ えら)から取り込み呼吸後の二酸化炭素を、
腹の中の大きな浮き袋(鰾)に取り込み、
特殊な筋肉を収縮,振動、共鳴させて鳴き、
居場所を知らせ、仲間を呼ぶのだ。

凪の静かな海でエンジンをスローにすると、
水中から「ボウーボウー」と聞こえ、
薄暗い明け方は不気味だと漁師は語る。

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 メスは1kgオーバーの大きいサイズが多く、
オスはリリースしてもいいかなと思う
小型の600〜800
gのサイズだ。

このサイズに成長するにも4〜5年かかる。

成長は遅く
50cm、
1kgオーバーになるのに10年近くかかる魚だ。

「ボウーボウー」
と鳴いてプレスポーニングで集まったポイントを把握すると、
もう大変、船中の全員に掛かり、大きいのから釣れてくる。

仕掛けを落として小さいのが釣れるのは、
すでに竿を出されたポイントで、
竿が抜けているポイントだと、入れ食いになり飽きてしまう。

いくら高級魚と言っても引きが強くもなく、
ラインが切れることもなく、胸鰭を広げて、
抵抗するのでトルクが強くなり、重くなる。
 
年中、食べたいわけではないが、今が一番美味しい時期だと思う。
産卵期になると卵や白子に栄養を取られ、身痩せするので味が落ちる。
刺身でも、お鍋でも美味しく、塩焼きもいい。

イタリアンやフレンチの
オーナーシェフが欲しがっている魚だとTVで言っていた。
煮ても、焼いてもおいしい魚は当然、刺身でも美味しい。

船頭、漁師が「刺身がいいよ」と言う魚は
刺身用で焼いたり、煮たりする魚ではないようだ。
 
NHKの取材の時のホウボウは料理された写真が、テキストに載った。
コメントは
「美味しい魚ですね。」
と語っていて、
苦労して釣り上げた釣り人のことは、何も語られていないのである。

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1946年世田谷生まれ。

当時の世田谷は自然がいっぱいで仙川、野川にタナゴもいた。
多摩川には小河内ダムもなく魚がいっぱいいた時代だ。
当然、遊びは魚捕りになる。
近くの進駐軍の家でルアーを見たり、
フライフィッシングの写真で興味が湧き、
タックルを手に入れるが使い方がわからず、奥多摩に通う。

奥多摩、御岳に「国際鱒釣場」があり、
フライフィッシングをする外人がいた。
見よう見まねでできるようになったが、
釣場以外では釣れず、幻の魚になっていた。

山女魚、岩魚の種苗生産ができるようになり、
放流魚が多くなり、興味が小さくなって、
バスのルアー釣りに、
1983年にハワイ島でプラグでのローニンアジ釣りを、
1984年にオーストラリアでヒラマサのジギングをきっかけにして、
「海のルアー釣りは日本でも成立するのか?」との思いで、
海のルアー釣りにのめり込んで行く。

取材協力していた「フィッシング」誌の吉本万里編集長の
「チャンスがあったら、挑戦しろ!」
の言葉で、擬餌鈎の可能性を追求し始めて、
気が付いたら、この年になった。

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