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魚と釣り

2014年06月

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ほとんどの魚は産卵すると産みっぱなしで、面倒をみることはまずない。

カツオもキハダもそうだ。
カツオは鹿児島と沖縄の間の薩南諸島以南で産卵行動が確認されているが、
産卵する主なエリアは北緯20度、南緯20度の間、
熱帯エリアの海で周年産卵行動をする。

だが、近年の調査では
「2、3歳魚は冬に多くが産卵し、4歳以上は夏に多くが産卵している。」
と報告がある。

春、夏、秋の産卵量は少なく、冬生まれの群れが多く出現している。
このことは、初夏に日本近海に回遊するカツオが1歳未満の、
「チャッパネ」と呼ばれるサイズを多くしている。
このサイズは刺身で食べても味がいまいちである。
 
多くの魚類は個体数が減ると性成熟の若年化が現れる。
カツオも、その傾向が強くなり、
日本近海を成長回遊していた、2歳以上の性成熟したカツオ群は産卵を強く意識して、
伊豆沖、三陸沖や常磐沖に短時間しか留まらずに、
南の産卵場に下ってしまうのだ。

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黒潮に沿って回遊しているカツオは不漁が長く続いている。
これは産卵場海域でのカツオの捕獲が増えたためだ。
インドネシア、パプアニューギニア、フィリピン、中国、台湾、韓国の
巻き網船での捕獲が増え、
黒潮流域からの北上する群れが減っている。
 
また、日本人が旨みの素としている、
「カツオのだしの素」の原料としてカツオのエキスを取り出すのにも、
サイズは関係ないので乱獲してしまう。

宗教的に肉の旨みを使わない国も多くあり、乱獲に拍車をかけている。
 
日本国の補助で漁業指導を受けた
インドネシア、フィリピン、キリバスの若者が本国に帰り、
乱獲志向を強くして、捕獲に精を出しているのだ。

成長途上の国では規制を設けるのにも、色々の事情が見え隠れする。
手っ取り早く、資源を海に求めていることは確かである。
日本も、その昔はそうだったのだ。
独航船と呼ばれる、船団に所属しない船で、太平洋の魚を獲りまくった時代があった。
 


話が横にそれたのでカツオの話に戻そう。
カツオの回遊は南北回遊で、南で生まれたカツオは潮流に乗り、
北へと成長回遊して、潮温が18℃以下に下がる頃に南に下る。
回遊する群れは三歳以下の若い魚が多く、
産卵を強く意識している4歳以上の群れは、
回遊はしても、あまり、北に回遊しない。
 
2歳になると50〜80%の個体は性成熟をする。
3歳になると100%、性成熟する。
魚類は性成熟すると生まれたエリアに戻る、帰巣本能が強く働く傾向が強い。
野生の動物は若い時に旅をして生息エリアの拡大を図っている傾向が強く見え隠れする。
 4歳以上の群れは産卵を強く意識して、生まれたエリアに留まる傾向が強くなる。
 
三陸沖では3〜5kgのサイズが多くいたのだが、
近年、このサイズより小型の2〜3歳魚が多くなり、
産卵を強く意識して、このエリアに長く留まらずに南下してしまい、
捕獲する時間的タイミングが短く、ポイントの把握、捕獲を難しくしている。
 
カツオの成長は早く
 1歳で1.5㎏、チャッパネと呼ばれるサイズに成長する
 2歳で3〜4kg
 3歳で5〜6kg
 4歳で8kg前後
に成長する。

寿命は10〜12年、最大で又長110㎝、34.5㎏の捕獲記録もある。

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カツオの動きは俊敏で右に行ったり、左にいったりで釣り人を翻弄させる。
同じサイズなら魚類中、最大の遊泳持続力パワーを持っている。
その源となっているのは血合筋と呼ばれる赤筋肉であり、
血中に酸素吸収色素とか、酸素吸収酵素と呼ばれたりする、色素蛋白質が4種ある。
 
人間はヘモグロビン、1種であるが、
カツオはヘモグロビン、ミオグロビン、シオクロビン、チトクロームがあり、
酸素と反応して赤い筋肉を作っている。
この赤い筋肉が有酸素運動を得意とするものであり、
人間だと、長距離ランナーの有酸素運動と同じだ。
 
マグロ類も持続力があるがチトクロームがなく、3種であり、
ビンナガの様な、白筋肉は引きが弱い。
瞬発力はあるが、持続力が弱くなる。
 
白身の魚は血量も少なく、ヘモグロビンとミオグロビンしかなく、
瞬発力はあるが、動きを持続する力はない。
人間に例えると、
短距離ランナーや相撲取りの動きで、無酸素運動になる。 

 
6月20日に相模湾にキハダが入って来た。
これからが楽しみだが、潮温が22〜23℃と低いのが気になる。
24〜26℃が良いのだが
エルニーニョ現象の年は潮温が上がらないことが多く、先が読めない。

キハダ、ロングレンジの釣り

大カツオ1

毎年、5月の初めに黒潮の勢いが強くなり、
伊豆諸島の浅場にぶつかりグニャグニャに蛇行する。
今年はその蛇行が4月に起きてしまい、
カツオの鳥山が沿岸では確認できない。

房総半島の先端、野島埼沖に黒潮が接近して「カツオ」が回遊してくるのだが。
接岸が遅れているのか、カツオが少ないのだ?

このカツオが初カツオで、ご存知の通り
「目に青葉 山時鳥 初鰹」のカツオである。 
年明けの1月、2月に九州や和歌山で獲れるカツオは初カツオとは言わない。
若葉の匂いがムンムンする頃の、カツオを言うのだ。
芭蕉と親交のあった山口素堂の俳句で、芭蕉的な明快な句だ。


貴雅丸、初カツオ

今年の2月の中頃から3月にかけて、
南紀、周参見沖に黒潮が接岸して
10kgオーバーのカツオやビンナガ、キハダが釣れていた、
カツオの大きいのは17kgもあった。

地元では初ガツオと騒いでいたが、「青葉がない」と言うと、
地元の漁師は「南紀は一年中、青葉だ」と言っていた。

ビンナガ1ビンナガ

キハダは50kg、ビンナガは30kgのグッドサイズで港は盛り上がり、
これからのカツオ漁「ケンケンかつお(すさみ町のブランド名)」に
期待をかけていたが大不漁になった。


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カツオは黒潮の際に沿って北上して来るのだが、
冷たい潮にぶつかるとUターンする時もある。

日本の太平洋沿岸に接近する潮流は4つあるのだが、
沿岸に接近すると黒潮に吸収されてしまう弱い潮流だ(イラスト参照)。
 
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北から言うと三陸東沖北上流、小笠原・伊豆諸島北上流、
紀伊半島南側流、それと黒潮だ。
これらの潮は太平洋の赤道付近の海水が
地球の自転によるパワー「コリオリの力」によって、
北半球では時計回りの方向に流れる。

低気圧や海の冷水渦(冷水塊)は反時計方向に回り、
冷水渦は上昇流を発生させ、低層にある冷水層を上昇させる。

この時に長い年月を掛けてボトムに蓄積された栄養塩類も上昇する。
これを糧にして植物プランクトンが増え、
動物プランクトン、これをベイトとする小魚、
小魚を捕食する大魚と食物連鎖へと繋がるのだ。
海生生物が寿命を迎え、死ぬと腐敗分解されて栄養塩類に戻る、
これがライフサイクルである。

しかし、海で光合成される有機物は微量で少なく、
そのほとんどが陸上の植物が作り出している。
それ故、南から北上して来る潮流には栄養塩類が乏しく、
海の砂漠と呼ばれる流れになる。
陸地にある植物が太陽の光を浴びて光合成で有機物を作り、
落葉、落果で地上に落ちて、腐敗分解されて雨で流れ、河川を通じて海に流れ込み、
そこに熱量のカロリーを持った潮流に出会うと
プランクトンが大発生して食物連鎖、ライフサイクルが始まる。

黒潮も大陸の大河の栄養塩を貰い日本に接岸して、
北から南下する親潮とぶつかり、大きな潮目エリアを作っている。
黒潮と親潮がぶつかっている潮目をフロントと言う。

カツオは透明度の高い、貧栄養の水塊を好み回遊している。
また、塩分濃度が0.034%以下になるとそのエリアを回避する。

集中雨が降ると表層にいたカツオが
下層に沈み込んでしまうことがよくある。
日本海に回遊しないのは
塩分濃度が太平洋に比べると0.001%低いからであり、
黒潮の塩分濃度は0.034〜36%で、
日本海は0.033〜34%で、
対馬暖流の勢力が強いときに旅をする若魚が、小群で回遊する時がある。

キハダ47kg

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